在野の英才たちを糾合し、四十六年にも渡って頑張ってきた日象展。その故か、洋画では表現の切れ味鋭いものが目についた。己はいま、何を目指してこの絵を描いているのかという問いかけが、まずは心の中でしっかりと整理されてのことだろう。それが例えば、山野に広がる水面一つとつても、作家ごとに実に様々な反映像を生み出すという好結果につながっている。
日本画では、かつて創立メンバーであった大竹玉津氏が、久しぶりの大作「感動」 を出品された。フラメンコ・ダンサーの艶やかな魅力を、抑えの利いた動きと鮮烈な赤に凝縮して見せる手腕はさすがである。その他の作品でも感情をもろに表に出すというよりは、幾分抑え気味の中に和の感情を漂わせる高等技法で、このジャンル特有の品格を渉まものが多かった様に思う。紙彩画では、さすがに紙の風合いをそのまま花びらの質感へと転じた、修練の作が少なくない。儚い花々がこうした技法のお蔭で比較的長い寿命を満喫できるとしたら、これまたフラワーアートの隠れた効用であろう。切ってよし、塗ってよし、貼り重ねてよしの切絵には、まだまだ技法上の開拓すべき余裕が残されていると感じた。
そして今展の華は、なんといっても工芸・造形部門である。皮革アートの管野氏の「敦燈の碧い空」は、4パーツからなる平面に青い模様を浮かび上がらせるユニークな着想で、見事に日象大賞を射止められた。木と格闘した諸作品にも、印象に残るものも少なくない。
他方写真は、今年から再び復活してきたニューフェースである。厳しい自然にレンズを向け、ハッとするような美しさな中に対象を捉えた秀作に混ざって、人々の日常
を粘り強く撮ったものが散見される。これからどんな映像を見せてくれるのか、早くも期待に胸躍る思いである。
【会期中の様子】
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日本画会場風景 |
洋画会場風景 |
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工芸会場風景 |
小作品会場風景 |
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写真会場風景 |
紙彩画会場風景 |
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