洋画(水彩)、日本画(水墨)、紙彩画(切絵)、工芸(造形)に小作品(洋画・日本画)の多彩な作品群の中から、受賞作品を中心に寸感を述べる。
日象大賞は切絵の岡部正子(準会員)の『自撮り』。球体のオブジェに映る自分の姿を撮った作品で、モノトーンによる大胆な構成にシャープな切り口が新鮮。内閣総理大臣賞は紙彩画の菅野智子(会員)『オータム』。黒・白に配した朱赤が鮮烈。画面の肌合いにも工夫があり心象性に富んだ作品。
衆議院議長賞は洋画の下田悦男(会員)『影』。かなり古びた板塀の矩形の大地に上半身の影のみが刻印される。今日の閉塞感や不安感をわずかにのぞかせた青空が、更に深める。今を生きる孤独感が漂う。参議院議長賞は岩堀幸子(洋画・会員)『しらかば湖畔』。
淡い色調が芽吹きどきを優しく描き、空気感 をとらえた。外務大臣賞の古家 明(工芸・会員)は陶による『想』。塊をスパッと断ち切っ たような造形で、切断面のニュアンスに富む陰影が魅力的である。
文部科学大臣賞は日本画の柘植好子(会員)の『再生する空間』。緊張感ある抽象構成に左右への広がりを持たせ、わずかに施した色彩が効果的だ。自然は時に人知を超えた姿を見せる。並木の樹々が展開する構成に『神秘なる造形』を感じた足立健一(洋画・会員)はその思いを掬い取って環境大臣賞を受賞。
都議会議長賞は田村きよし(洋画・会員)の『黄昏』。畑仕事の手を休める老爺をしっかりと描写。となりの向日葵の挿入もいい。
東京都知事賞の花村衣枝のパッチワークに よる『花朝月夕』は一般で受賞。
大きな賞を一般に与える、こうした作品本 位による審査は 本会のきわめてすぐれた運営方針であって、他にも大樹賞の小田切嫩子(刺繍・一般)新人奨励賞の平野博史(洋画・一般)、藤本千恵子(日本画・一般)、田中美津子(紙彩画・一般)など、すぐれた作品が多く見られた。
小作品部門では グランプリの小林 進(洋画・会友)、会長賞の片山千枝子(洋画・一般)を挙げたい。
来年は45回の記念展、皆さまのいっそうのご精進を望みたい。
【会場の様子】
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