揺らぎ 各公募団体が出品者の減少を憂うる中、 40回の記念展で出品者が増加したのは、何よりの慶事であった。
洋画では豊かな色彩感と卓越した描写力を見せた宮川登が最高賞に輝いた。人間の深奥を見詰める深澤せつ子、現代の日常を象徴的に描き出す谷村百合子と画面構成の妙が光る平瀬柳子、廣中久江は評価される。静寂さの中に温もり感じさせる船越信、内藤則一は特筆される。水の動静を描き出した伊大知駿子、幾何学構成と裸婦を組ませた瀧野慶子には今後を期待したい。沈む太陽の逆光で樹木を捉えた坂本雄一、秋の実りを大画面に描出した増井冨美子の水彩も注目された。
日本画では忘れ去られた存在となった船の姿を描いた赤石久男、画面を竪に分割し装飾性豊かな作品の諸星初代、石組みの堅牢な構築感と水面のを見事に調和させた川地勲子等を挙げる。大画面に挑戦する清水春海、藤野房子、坂野悦子の積極性は評価される。
紙彩画は上位賞への該当が少なかったが、踊り手の一連の動きと幻想性が一体となった白根澤広子の作品は素晴らしい。深谷日出子の大胆な造形感は紙彩画に新たなる魅力をもたらし、岡部正子の切り絵に紙彩画部門の作品評価への見識の広がりを感じる。
工芸では自身の思いを卓越した描写で陶板に表現した吉永孝夫が高評価を得た。火欅の上に釉掛けしイメージを重層させた松枝信、方形を平面的立体的に構成した渡邉みどりの斬新さ。絵画性と横への展開を強調したガラスの平野弥生、伝統に現代性を加えた漆の泉博道の作品も注目される。
小品部門では日本画で吉野の桜を情感豊かに描く斎藤千代、美しい色彩と不定形の集積で思いを表現した遠藤順夫が光った。
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